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飼料給餌マネージメントの考え方とその取り組みについて | 2002年01月 |
2001年ウイリアムマイナー集中トレーニング講座が開催されました。 |
昨年、11月11日〜11月15日にかけて、北見モイワスポーツランドにて、ウイリアムマイナー集中トレーニング講座が開かれました。同研究所では、毎年海外から酪農の各分野で活躍されている栄養学者や、獣医師の先生を日本へ招きセミナーを開催しています。このセミナーには全国各地から、酪農家、獣医師、普及員、飼料会社等の酪農関係者が多数参加し、新しい知識の習得に努めています。 今回のセミナーは、Dr charles Sniffen, Dr Walt Guterbockによるセミナーで、Dr Walt Guterbockは獣医師として臨床、酪農家のコンサルテーション、大学での研究等の仕事を行った後、現在は酪農家の経歴の持ち主です。したがって農場をコンサルタントしている側と、されている側の両方を体験した経験から非常に有意義な講義を聴くことが出来ました。 今回は、セミナーの中でも、酪農家としてのDr Walt Guterbockなりの飼料給餌マネージメントの考え方とその取り組みについて、紹介してみたいと思います。 |
牛が実際に摂取した飼料がどのようになっているか把握する事 |
実際に牛が飼料を摂取するまで、3つの段階の、飼料が存在します。 @栄養コンサルタントが考えた、「飼料設計による飼料」 A各飼料原料を「Mixした後の飼料」 B実際に「牛が摂取した飼料」 の3つの段階が存在します。 最終的には、「牛が摂取した飼料」がどのようになっているのかをしっかり把握する事が、この3つの飼料の中で最も重要なことになります。Dr Walt Guterbockは飼料設計については、自分自身で時間をかけて行うよりも、飼料 について詳しい知識を持ち、他の農場の飼料設計も行っているような、外部の栄養コンサルタントに依頼しているようです。飼料給与マネージメントでは、「牛が摂取した飼料」と「飼料設計による飼料」の誤差を少なくするための飼料給与マネージメントが行われているようです。 |
飼料給与マネージメントとそのチェック項目について |
@単味飼料は、事前に混合しておく ATMRの混合の順番はTMRの状態をみて決める。現在ではヘイレージ、乾草、穀類、コーンサイレージの順番になっている Bミキサーを回し始めたら、けして仕事を中断しないようにする C給与されたTMRについては定期的に数カ所で、サンプルを取り、ペンシルバニアの篩などを使ってその形状をチェックする Dミキサーの秤が正常か定期的にチェックする E残飼TMRについても定期的にそのCPをチェックする Fサイレージの品質は同じサイレージであっても少なくとも年3回は分析を行う |
1日1回給与(TMR)の利点と欠点について |
【利点】 @労力、燃料代の節約が可能になること A飼槽に飼料が、1日中ある頻度が高くなる 【欠点】 @暑いときは、2次発酵をする A給与量、摂取量が多いか少ないか判断することが難しい。もし、2回給与を行うのであれば、朝の給与後の食い込みの状態を見ながら夕方の給与量を調節出来るので無駄がない。1回給与で飼槽に常に飼料があるように給与した場合、多くの残飼がでてしまう。 B1回給与の場合、大量のTMRを作る場合が多くミキサーの容量を最大限使って、混合する事になり、満杯の状態で撹拌することになる。そのような、状態で撹拌した場合、混合の状態が不均一なものになってしまう。 C牛の採食行動に合わせた給与体系を考えると搾乳後の時間帯に給与する事が効果的であるが、実際にはその時間帯は農場の中でもっとも忙しい時間なので、給与することは難しい。 Dr Walt Guterbockは、コンサルタントの立場としてなら、多回給与の方がメリットが大きいと考えていますが、酪農経営のオーナーとしての判断は、1日1回給与を選択しています。 しかし前記した「飼料給与マネージメントとそのチェック項目」により、「飼料設計による飼料」、「Mixした後の飼料」、「牛が摂取した飼料」の3つの飼料の誤差を少なくする努力を行っているようです。今回の話題である飼料設計と、実際摂取された飼料の誤差を少なくするための飼料給与マネージメントは、重要な部分であると思います。しかしながら「飼料設計の飼料」が実際の農場の給与体系とかけ離れたり、適切でない場合、すぐれた飼料給与マネージメントが行われても機能しないでしょう。 したがって「飼料設計の飼料」は酪農家と十分議論した上で、栄養のルール等を考慮しながら設定する事が大切になるでしょう。 |
最後に |
今回は、ウイリアムマイナー集中トレーニング講座で、農場をコンサルタントしている側と、されている側の両方を体験したDr Walt Guterbockによる講義の一部をご紹介しました。 次回からは弊社の酪農家ユーザー紹介を兼ね、酪農家で実践されている事例を紹介しながら「技術のページ」を連載していきたいと思います。 技術部 技術課 内田勇二(獣医師) |