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2015年03月 シェパード中央家畜診療所 松本大策先生の社内講習会  
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2012年05月 アルバータ州立大学 大場准教授による社内講習会  
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2011年09月 乳牛の新しい栄養計算ソフト「AMTS」の紹介
〜米国 AMTS社 訪問〜
 
2010年07月 ウィスコンシン州Central Sands Dairy LLSの視察について(後編)  
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2009年09月 乳牛の飼料効率を考えよう  
2008年10月 <特別寄稿>繁殖についての取り組み
〜牧場と、若き酪農ミセスの奮闘記〜
 
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2007年09月 カリフォルニア州立大学の研修と視察  
2006年11月 ワールドデーリーエキスポ2006  
2006年05月 乾乳期間について考える  
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2005年02月 ユーザ紹介(大樹町 山下牧場)  
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2002年04月 ユーザ紹介(苫小牧市 五十嵐牧場)  
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2001年08月 暑熱対策について  

 
暑熱対策について 2001年08月
2001 暑熱対策について「愛知県酪農家の取り組み」
7月19日〜21日にかけて、愛知県で大動物を対象として開業(獣医師6名、テクニシャン1名、事務2名)されている、あかばね動物クリニックの鈴木先生にコーディネイターをお願いし、愛知県の酪農家における暑熱対策の取り組みについて視察してきました。
視察時の最高気温は34度まで上がり湿度も高く、暑熱対策の実際を研修するには格好の気象条件となりました。
暑熱対策その1:新鮮な水を十分飲めること。重曹と食塩の自由採食。

フリーバーンに設置された換気扇
今回視察した酪農家は50頭から200頭の牛群で、乳量も高く(10,000Kg以上の牛群)、疾病の発生も少ない酪農家がほとんどでした。
最初に見学したフリーバーン農場に到着したのは、午後2時で外はかなり暑くなっていました。しかしながら牛舎内では座って反芻している牛も数多く見られ、この様な厳しい環境のなかでも、牛群は落ち着いている様子でした。

1頭当たりのスペースが長い水槽
フリーバーンは、60頭1群の牛群サイズに対して、3カ所に水槽(1頭当たりの水槽のスペースが20cmになるように設計)が設置してあり、新鮮な水が十分飲める様になっていました。
さらに水槽の隣には重曹及び食塩が自由採食出来るよう設置してありました。暑さが厳しくなるにつれ、重曹よりも食塩の消費量が増えているとのお話でした。
新鮮な水が十分飲めるような水槽の設置状況や、重曹、食塩のフリーチョイスのシステムは、今回視察したどの農場でも採用されており、暑熱対策の第一歩は新鮮な水が十分飲める環境作りから始めることが大切だと改めて認識しました。

暑熱対策その2 :換気扇の設置の高さとリレー式換気システムの注意点。

フリーストールに設置された換気扇
フリーストール、フリーバーンにおける換気扇の設置に関しては、まずその換気扇の数に圧倒されました。写真はフリーストールでの一例ですが、数や換気扇の設置の間隔、角度もさることながら、換気扇の設置方法で考慮しなければならない点について考えさせられました。換気扇の設置の高さ(特にベッドの上に設置してある換気扇の高さ)と送風システムです。

フリーストールに設置された換気扇
換気扇の設置の高さはベッドに座っている牛に風が当たるよう、牛床から180cm程度の高さで設置する事が重要とのお話でした。また飼槽通路に設置する場合は、牛の乗駕や、トラクターの作業の邪魔にならないような高さで、なるべく低く設置する事がポイントです。またフリーストールで見られるリレー換気システムは、送り出す側に障害物(例えば壁、倉庫など)ある場合、風の流れがブロックされてしまい、十分な換気効果が得られないとのことでした。換気扇の設置を考えるとき、換気扇の数、間隔、角度などに気を取られがちですがこのような点に目を向けることも、フリーストールのリレー換気システムでは重要と思われます。

暑熱対策その3:ミストシステムの利用

ミストシステムとセットになった換気扇
ミストシステムと換気扇を組み合わせた暑熱対策について、フリーストールとフリーバーンの農場についてそれぞれ視察する事が出来ました。ミストシステムを視察したのは今回初めてであり、ミストシステムが作動し水を噴射したときには牛舎内が確実に涼しくなることを体感しました。ミストシステムを採用する場合に大切なことは、換気扇とセットであることです。ただ水を噴霧して濡らすのではなく、濡らした後に送風し、乾燥させることが大切です。

フリーバーンにおける換気扇と
ミスト噴射
どちらの農場もミストの噴射後、牛床が濡れることも無く、牛舎の仕切り柵位の高さでミストが気化する程度の噴射量に設定されているようでした。ミストに因って、気温は下がりますが、湿度は上昇してしまいます。従って、ミストを噴射するかどうかは、日々の温度と湿度の兼ね合いにより決定しているとのお話でした。フリーストール牛舎のミストシステムの方は、換気扇の周囲に4カ所噴射口が取り付けられています。この様に換気扇と対になっているミストシステムの方が、それぞれ独立している方式よりも効果的に冷却効果を発揮すると思われます。

暑熱対策その4:給与体系の工夫

北海道の場合と異なり、粗飼料はほとんどが購入粗飼料の形態を取っていました。従ってサイレージの発酵品質や栄養成分、または水分の変化などTMRを給与するのに考慮しなければいけない要因が少ないことがその特徴です。また吟味された粗飼料の使用により、高品質の粗飼料が給与可能となります。粗飼料が購入飼料であるため、TMRは低水分となってしまうので十分に加水し、水分調整をして給与されます。サイレージを給与しないので給与後の2次発酵の心配をする事なく(もし副産物を使っている場合は、2次発酵する事もあるようです)、TMRを給与できます。しかしながら、どうしても夏場の暑熱ストレスによって乾物摂取量は低下するようです。TMRの摂取量が低下してきた場合、TMRの変更の手法は、粗飼料とデンプンを同じ様な割合で減らすが、ビートパルプ、ビール粕などの中間飼料の増給や、ミネラル、ビタミンの給与量は変更しないようにして調節する事が、夏場の暑熱対策を考えたTMRの調節法とのことです。
最後に

今回の視察では、そのほかつなぎ牛舎のトンネル暑熱対策(25個の換気扇が設置されたつなぎ牛舎)、屋根の散水システム、帰り通路でのシャワーシステムなど、多くの興味深いシステムを視察しましたが、またの機会にお知らせします。

技術部 技術課 内田勇二(獣医師)