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ユーザ紹介(大樹町 山下牧場) | 2005年02月 |
前回、前々回と繁殖成績について解説しましたが、計算式や専門用語も使いましたので、少し難しい内容になってしまいました。今回は、話題を変えて久しぶりに弊社のユーザー紹介をしたいと思います。今回は、乳検で経産牛1頭当たりの乳量が12,600Kgの成績で、最近では黒澤賞も受賞された大樹町の山下牧場について紹介してみたいと思います。 |
山下牧場の概要について |
山下牧場は、経産牛約40頭つなぎ牛舎で、分離給与にて管理しています。平成13年に経営移譲を受けた山下博氏は“家族がそれぞれ役割を持ち、酪農経営については家族で十分議論したうえで、共通の目的に向かっていく”ことを目指し酪農に取り組んでいます。その結果、平成13年12月(2001年)時点では、経産牛1頭当たりの乳量が9765Kgであった牛群が現在では12630Kgへと飛躍的に増加しており、乳成分も乳脂肪率4.0%、乳蛋白質率3.28%で、体細胞も12万程度で、乳質も良好な成績を維持されています。(山下氏は、これまで何回か紹介している酪農DBを活用されていますので、今回はそのデーターを用いました。) |
2004/11/23牛群の成績 |
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2001/12/05牛群の成績 |
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飼養管理体系の改善 |
![]() | 経営移譲に伴い、個々の産乳能力を現状の飼養形態を活かして最大限発揮するために平成13年4月から既存牛舎のリフォームに取り組みました。 既存牛舎のリフォームの具体的な改善は @飼槽をレジコンにて改良 A牛床マットを設置 Bトンネル換気を行う Cニューヨークタイストールに変更 D連続水槽の設置 牛舎のリフォーム5点セットに着手。 |
具体的な飼養給与体系について |
![]() | 山下牧場のサイレージは適期に刈り取りされ、バンガーサイロでしっかり踏圧された発酵品質の良好なサイレージが貯蔵されています。また、サイレージを取り出す場合も、サイレージカッターを使い、牛舎に移動された給与前のサイレージもサイレージカッターで切り出した姿でおかれ、牛の口に入るまでサイレージの2次発酵が最小限となるよう努力されています。 |
育成牛・乾乳牛について |
![]() 育成牛舎 | また、乾乳後期群はCaの給与量を極力減らし、ビタミンE,セレン等を増量した乾乳後期用の配合飼料を給与し、分娩後の低Ca血症の発生等を防ぐような給与方法がとられています。このように泌乳期のみでなく、将来の牛群を支える育成牛や、分娩後の乳量を大きく左右する乾乳後期の牛についても考慮した管理が行われています。 |
繁殖成績は? |
現状の繁殖成績はどうでしょうか?酪農DBを用いてデーターを比較してみました。平成16年・11月のデータと平成13年・12月のデータを比較してみると分娩間隔は伸びています。(413日から441日へ)また、初回授精も遅くなっている様です(78日から93日へ)。したがって、初回授精の遅れと、分晩間隔の伸びとは関連があると思われます。おそらくピーク乳量の伸びにより以前より発情発見が難しくなったり、授精適期でも、なかなかBCSが回復しないため初回授精が遅れてしまったことや、授精しても受胎しないケースが増えてきたこと等が考えられます。やはり乳量が伸びた影響が繁殖成績の低下につながっているのでしょうか?ただし、繁殖成績の低下については、以前から認識されており、その改善についてはすでに様々な取り組みがされています。酪農DBの活用、きめ細やかな観察、バイパスメチオニン等の使用により、最新の繁殖成績は、平均空胎日数が165日から132日へ短縮され、実際に授精回数も約2.5回から2.3回へ少なくなっています。最近の妊娠鑑定等の結果等が良くなってきたことから、繁殖成績は以前よりだいぶ改善されてきたことを認識していると話されていました。したがって、現在分娩間隔の成績は441日ですが、今後は短くなることが予想されます。 |
最後に |
技術部 技術課 内田勇二(獣医師)