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酪農経営データベース(酪農DB)の活用について | 2003年09月 |
酪農経営データベース(以後酪農DBとして記述)の概要 |
酪農DBとは、各畜産関係団体が個別に調査したデータを中央畜産会が統合して管理し、酪農家が必要な時に、インターネットを用いて直接利用できるシステムです。この基礎データの中には“経営データ”、“乳検データ“、酪農基礎調査”等が含まれます。 この酪農DBを利用できるユーザーは @酪農経営者自身 A酪農経営者に承認してもらえた、支援者組織 に限定されています。 支援者組織は各地域の乳検組合が加入しているケースがほとんどです。私ども丹波屋も今年の春に、数件のユーザーから承認を頂き、民間組織としては唯一の支援者組織として、酪農DBに加入しました。現在では、承認頂いたユーザーの乳検情報を酪農DBからダウンロードし、酪農家の牛群成績の把握や飼料設計などを含めた問題点の改善などに役立ています。 このシステムには、データをグラフ化したり、ある程度加工可能な分析ソフトが備わっていますので、いろいろな角度から牛群を分析する事が可能であり、乳検のデータをより有効に活用することができます。 |
酪農DBの解析ソフトの基本画面について |
酪農DBに加入すると、分析システムのソフトが配布されます。支援者の場合、複数の酪農家のデータを解析しますので若干基本画面が異なりますが、分析システムの手法は同じです。 乳検データを取り込んだ場合は、主に用いるのが牛群検定の画面になります。牛群検定の画面は各項目に分かれ、その目的に応じて分析項目が選択できます。したがって、いろいろな角度から牛群を分析する事が可能となり、乳検のデータをより有効に活用できるようになります。 |
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牛群検定の項目について |
牛群検定の個体情報の項目は14項目に及びますが、私自身は @検体成績リスト(個体の検定日データと検定成績データ) A乳量と乳成分の推移リスト(検体日から過去1年間の個体の乳量、乳脂肪、乳蛋白、P/F比、SNF、体細胞、MUNの推移) B乳量と乳成分のグラフ C検定成績の検討表(今月の検定日の乳量、乳成分と前月の比較)、牛群の検定成績と経営情報リスト(検定日の成績と過去の成績の比較) D年間管理情報(繁殖情報)グラフ(今月の年間繁殖成績と過去の成績の比較) E体細胞のグラフィック(体細胞、リニアスコアに関する情報) F最新24ヶ月月別検定成績表等 を中心にデータを見ていきます。 例えば、Bの乳量と乳成分のグラフは各項目が分娩後日数の推移に伴ってグラフ化されていますので、非常に解りやすくなっています。また、各項目ともに、並び替え(分娩後日数、乳量、乳成分などで)が可能になっていますので、より細かい解析も出来るようになっています。 |
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分娩後日数の乳量の推移では、牛群の流れを知ることが容易に出来、マウスでポイントすればどの個体かが解るようになっています。例えば分娩後乳脂肪が5.5%と高い個体は、351番であることが解り、この個体の乳量、乳蛋白、MUNも表示されます。 乳量と乳成分の推移リストは搾乳日数の短い順に並び替て見ることもできます。これを見ると分娩後の立ち上がりは良いようで、今回乳量が高い(50Kgを超えている)牛は前乳期でもピーク時に60Kg以上の高い乳量であったなども理解できます。 その他の項目もグラフや表を利用して、個体のより細かいデータをさらに詳しく簡単に知ることが出来るのが最大の特徴でしょう。 |
繁殖管理の基本画面 |
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繁殖管理の項目は、現場でのアップデイトのデータとかなり違う場合があります。実際にあるユーザーが酪農DBの繁殖管理データでは妊娠と表示されているが、実際には未妊娠であり、なぜ?との相談を受けたことがありますが、おそらく、乳検のシステムでは、70日ノンリターン(授精後70日授精報告がないものは自動的に妊娠とするケースがあるのではないか)で、妊娠と見なす場合や、正確な授精報告がなされない場合等、検定と実際の成績とに違いが出てくる場合があるのでしょう。したがって、繁殖管理に関しては、より正確なデータを酪農家や繁殖の定期検診等をされている獣医師が直接入力する事が望ましいと思われます。それが出来ない場合、より正確な授精報告や、早期の妊娠鑑定等を行い、現状と乳検データとのあいだで大きな誤差がない状況にする必要があります。 繁殖管理の項目については前記したような背景がありますので、クイックリストや、空胎日数のグラフを参考にする程度にしていますが、今後は正確でアップデートな繁殖データを酪農家自身で入力してもらえるように啓蒙していきたいと思っています。 |
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クイックリストにはJMR(牛群の繁殖状況を指数化したもので目標は20以下)、相対妊娠率、初回授精日、受胎率、発情発見率、空胎日数、分娩間隔、経済損失等の項目が解るようになっています。 また、空胎日数のグラフは、妊娠牛、授精中の牛、未授精牛が色分けして示され授精開始の日から受胎まで(実空胎日数)や授精の回数、授精の間隔等がグラフから読みとれるようになっています。たとえば、401(妊娠牛、青)の場合は、空胎日数が300日程度で、4回の授精で妊娠した個体であり、1回目の授精が分娩後50日で行われたが、2回目は230日程度であり、1回目と2回目の授精にかなり間隔があいていることが読みとれます。 このように、各個体の繁殖状況の詳細についても容易に把握できるようになっています。 |
酪農DBの問題点と今後の活用法について |
今回御紹介した、酪農DBは個体のデータや乳検での牛群の状況を把握するのには便利なソフトです。繁殖データ等が現場のデータを反映した正確なデータを入力していけば、かなり精度の高い繁殖状況を知ることが可能となります。酪農家にとっては、かなり有用な分析ソフトとして活用できると思います。 ただ、一覧表で牛群全体の流れを判断する場合や、各産次のピーク乳量の比較などは、これまでと同様に乳検成績表を見ながら、酪農DBも活用する形を取らなければいけません。 酪農DBはユーザーの要望に添った形で改善される発展途上のソフトです。実際に以前要望していた項目も改良版では取り入れられるようになっていますので、今後このような点についても引き続き要望していきたいと思います。 現在、乳検に加入されている酪農家の皆様にとっては、牛群の繁殖状況や乳量、乳成分を分析し、その改善案を考慮する上で非常に有効な分析ソフトになるでしょう。 なお、このソフトに興味のある方は、北海道酪農畜産協会(011−209−8550)へお問い合わせ頂くとさらに詳しい情報を得る事ができます。また、丹波屋も支援者に登録しておりますので各支店の営業担当者にお気軽にご質問ください。 |
技術部 技術課 内田勇二(獣医師)